奥多摩奥秩父アックス登攀部隊

通称「たまちち」の活動記録

南アルプス 荒川出合い「夢のブライダルベール」

【フィールド情報】

南アルプス 早川渓谷

荒川出合い 3ルンゼ 「夢のブライダルベール」

マルチピッチ:3ピッチ

Rグレード:5級

Pグレード:Ⅴ+~Ⅵ

日 程:日帰り

適 期:2月中旬~3月中旬

「夢のブライダルベール」全景。
美しくも、お高く攻略の難しそうな花嫁さんだこと!Fiancé(婚約者)の顔が見てみたい…              

なんでもブライダルベールを持った花嫁の姿に似ていることから、そう名付けられたとか…

【活動データ】

令和4年2月6日(日) 日帰り

メンバー:吉田隊長、デクさん(松永)、まちゃあき(Zaki)

総時間:15時間30分

総距離:20.3Km

(累計) 登り↑ 2347m 下り↓ 2085m

本日はチャリ持参。帰りの下りで時間短縮作戦を企てる。積雪ない前提ですけど…何か?

車2台体制で、折り畳みチャリを3台持参。なんと豪華なプランニング…。

今日は、隊長とデクさんとまちゃあきの3人での部隊活動、略して「部活」。

って、中高生かっ!?

3人の活動だと登攀時間や手間等がかかるが、その分、達成感や共有する時間というものは、ソロやツ―マンセルの活動に比べる遥かに尊く、そしてやはり楽しい。

林道の積雪は些(いささ)かさん、これなら帰りは爆走列伝・レッツ&ゴー!?

奈良田ゲートから約3時間ほどかけて、荒川出合いへ。

ゲート前にチャリを停めて小休止。エネルギーを補給し、決戦に備えます。

ここから3ルンゼまでは、更に10~15分程度歩きます。

何故に、チャリ on the バナーナ?

実は、吉田隊長からバナナの配給があったのです。糖質チャージ、10分キープ。
これなら3ルンゼまでの林道はエネルギーが持つぜ!(?)

途中、いくつも凍った滝や染みだしを拝みながら皆で「すんげー…」と、じわじわとテンションを上げていき、やる気のスロットルを上げていく。

出合いからすぐの対岸に、すごい氷結があった。100m級(Ⅳ~Ⅵ)3ピッチ程度の染みだし。

正直、2月上旬のため「夢のブライダルベール」の氷結は甘いんじゃないかとも思っていましたが、そんな不安は全くもって必要のないものでした。出合い(広河原との分岐)から林道を少し行くと対岸には、すんごい染み出しの氷柱たちがお出迎え。

3ルンゼ目印の大岩。

そこから200~300m遡行すると、お目当ての花嫁が登場。

10時頃に取り付きに到着するも、既に1パーティー取り付いていました。先行パーリーの落氷が意外と激しく、また準備している時に「同ルート降下しますからぁぁー!!」と、まるで「まだ登るなよ?」というかの如く牽制されてしまったので、勿論この場の雰囲気を濁さぬよう、フォローが2ピッチに入り邪魔にならない距離感になるまで暫し待機。

N島弁護士、まちゃあきが登攀中に落としたBDウルトラライトスクリューを拾っていただいたようですが……えーと、スクリューはどちらへ?

因みに、先行パーリーはS気の強い女性と御人好しそうなおじ様でした。女性はアックス・テンションをかけながらも2~3ピッチをリードしていましたね。後に判明しましたが、この方はどうやらラジオにも出演している弁護士の方の様でした。彼女が同ルートを降下してくる時に少し言葉を交わしましたが、色々と言動が勇ましい方だと見受けられました。うーん、かっちょいいですね~

1P 約45m(Ⅳ+) Lead climber:デクさん

午前11時、登攀開始。

1Pは寝ているため「楽勝かなぁ~」と思っていましたが、氷は固く登攀距離も意外と長かったため、地味に体力を吸われる始末。

1P 終了点、氷柱の裏の様子。下からは気づかなかったが、かなりビシャビシと水が滴れている。

1P終了点はテラス状になっているため安定しているが、思いのほか水が滴れていました。

ビレイするデクさんは濡れていましたね……寒かろうに、お疲れ様でした(*_*)

まちゃあきを見守る隊長。「行ってこい!」と背中が語っている。

2Pは、氷柱を中央までトラバースからスタート。とりあえず1ピン決めてトラバースするが、まぁ~スリリング。やっぱり氷柱のトラバースは下腹部がキュンキュンしますねw

2P 約30m(Ⅴ+~Ⅵ-) Lead climber:まちゃあき

ルートの第一核心部である2P。今シーズンの状況は左右の氷柱というより、中央が氷柱状で下まで繋がっていました。(この状態だとグレード:Ⅴ+~Ⅵ-くらい?)不均一かつ不揃いな氷柱の処理は、まさに女性とのデートの様に気を遣い、アックスを打ち込む・アイゼンを蹴り込むと言うより、窪みや出っ張りに浅く打ちフッキング、足はフロンとポイントで乗り込むといった感じにデリケートな処理をしなければならず、またスクリューを打つ場所も選び進むのに結構苦労しました。(あれ、先月も雲竜でこんな感じの苦労したな…経験が活かされたか?)

2Pを定点カメラから。先日、負傷した腰痛との相乗効果(?)で結構キツかったよ?

勿論、ノーテンションで90度の氷柱状バーティカル部分を越えるも、依然として85度程度の氷壁は続く。目標としていた左岸側の灌木までは、まだ約20mはある。スクリューは残り4本。「参ったなぁ…」とボヤいてしまいましたね。2P終了点の支点の分も考えると、玉切れ確定。仕方がなく右岸側の10m程度上がった90度バーティカル部分基部に狙いを定め直上。4本の内3本をランニングで使用し基部まで到達。残り1本のスクリューとアバラコフ2発でハンギング・ビレイステーション作成しピッチを切りました。下からルーファイした想像とは異なり思った以上に進めなくて、またもちょい(上と下のピッチ終了点を考慮して)スクリューを装備してくればよかったと反省しました。

Dステではありません、ビレステで吉田隊長をお迎え中。(Second climber:吉田隊長)

アバラコフ2発を作っていたことで時間を要してしまい、隊長とデクさんをだいぶ待たせてしまいました。どうも、すんません…。その後は、隊長に続きデクさんも順調に核心部を越えビレステまで。なんでも、先程1P終了点での水の滴りで手袋もご臨終したとか。隊長の予備の手袋を借りてその場を凌ぎ、また登攀したとの事です…お疲れさまでした⦅*_*⦆

デクさんもお迎え。3人集合、ビレステでわちゃつく…笑(Third climber:デクさん)

3Pを見つめる隊長…。横顔は “戦場の漢"そのもので「惚れてまうやろー!」その格好良さにねw
まぁ、結局は花嫁さんにたかっている野郎どもなんですけどw

核心部は終わったといえ、気の抜けない3P。実質、ここも核心部といっても過言ではありませんでした。2Pで距離を伸ばせなかったこともありましたが、登攀距離は長く、またⅤ~Ⅴ+級程度の氷壁が断続的に続くセクションで、体力・精神力の消耗が否めないド根性ピッチ。「50mロープで足りるだろうか?」とも思いましたが、時間も押していたため隊長は途中でピッチを切ることなく、そのまま落ち口まで行ってくれました、流石です。ロープいっぱい確り50mありました。長期戦のお勤め有難うございました&お疲れさまでした。

なんでも、隊長のX‐DREAM1本は打ち込みの疲労の影響から、ハンドルのネジが緩んでがたつくとか…。それでも、物ともせずトップを張るとか「惚れてまうやろー!」シビれましたね、流石です。

隊長の勇士を撮影する人。いや、ちゃんとビレイしろや。

隊長がトップアウトした時点で、だいたい16時。おっと、時間が無くなってきたぜ…。

セカンドは、まちゃあき。サードのデクさんが登攀ラインをロストしないよう、ラインがわかる範囲でランニングのスクリューを残しながら、気持ちは1.5倍速で登攀。(セカンドなのでだいぶ楽な気持ちで登りましたが、3Pは結構長くそれなりのぶっ立ち具合だったよ?)落口を上がり、トップアウトして冗談をかましてる隊長の姿を見たと時は、思わず顔がほころびましたね(笑) こういう時に、緊迫した空気を緩めてくれる隊長には、感謝と敬意しかありませんw

日が沈みつつある中、最終ピッチをデクさんも無事にトップアウト。

この時、既に18時。いや~長かった。ってか、もう暗闇やん…。

当初、ここまで時間かかるとは思っていなかったため皆ヘッデンは取り付きへ置いてきてしまっていました。(ここも、今後の反省点ですね。)う~ん、これまた参った。

デクさん、ヘッデンなしでの日暮れ登攀、不安だったことでしょう。お疲れでした。

デクさんがトップアウトした時には、日は沈みダーク・サイド状態でした。

まぁ、もう日が沈んでしまったことに関してどーこー言ってもしょうーがないので、冷静に対処していきます。幸い皆、スマートフォンを持っていたので頼りないライトを3人で灯しながら懸垂準備です。

さぁ、ここからシスに落っこちぬよう、フォースの光の力でナイト・ラぺリングSTARTだぜ!

降下点は、落口左側(右岸)の樹木にありましたが、そこまで緩傾斜・雪付き岸壁で5mくらい、プロテクションが取れないため、また足元・地形の状態が見えずイケてなかったわけですが、そんなことを物ともせず隊長は「ほな、俺行くわ。任せろや。」と先人を切ってくれました。これまた「惚れてまうやろー!」(笑)惚れてまうやろー!のハット・トリックを決めた隊長に先導され、とりあえず降下点まで登り、懸垂降下準備開始。勿論、そこでもワチャワチャ。こんな状況下でも、冗談言い合って笑いあえるのは、信頼できる心強い"仲間"がいるからですね(笑)ソロなら、口はワナワナ・膝ガクプル、ちびっていることでしょう。

ナイト・ラぺリング中。うーん、伝わらないですね…ピンぼけしとるし。

下の状況が見えない中、3人の中で一番イっちゃってる・クレイジーなまちゃあきが先陣を切って、頼りないスマホの明かりを片手に降下点を捜索しながらの降下。まぁ、色々と藪と灌木が鬱陶しくって嫌気がさしました…。残置の降下点は期待できなかったので、隊長のように強靭(狂人?)な灌木を探しつつ、ピッチを切っていく。しかし、ここで問題が発生。懸垂降下2回あたりで、殿(しんがり)を務めていた隊長のエックソ…X-DREAM1本が紛失。灌木どもにラックから外され絡めとられたか…なんてこった。「まぁ、しゃーないわ。」と前向きな隊長を横目にテンションダウン↓「最後にこれかよ…。」

駄菓子菓子(だがしかし)、ロープ回収・次の降下準備中に、空から何か降ってくる鈍い音がありました。「まさか、ロープ回収に引っ掛かりが外れて落下したか!?」と期待を胸に、50mダブルロープ懸垂3回で無事に取り付きへ。先行して降りたまちゃあきが、全力坂…ではなく全力捜索。無事に発見しました。しかし、結構吹っ飛んでたよ?隊長のX-DREAMは右のナメ滝近くまで飛翔していました。(実は主人のもとに戻りたくなかったとか?)ともあれ、良かった良かった。

駄菓子菓子、次なる問題発生。アタシ(まちゃあき)のBDウルトラライトスクリュー16㎝の1本が無い…「お前も、灌木どもにラックから外され絡めとられたか…」なんてこった。今日で、スクリュー紛失2本目。流石に、中々の代償です。くの字の如く凹みました。しかし、時間も押しているので、気持ちを切り替えて取り付きから離脱します。

スクリュー紛失の怨念を表現する阿保2人。R指定・刺激が強すぎるので敢えてピンぼけ入れてます。

が、この後の取り付きからの離脱中に隊長が、林道をチャリで走行中のデクさんに、各々サイドストーリーが発生しましたが割愛。

チャーリーの停留場。先に帰還した人に乗って行かれていないか若干不安でした(先行帰還者の方々、すみませんw)ここからは、ほぼ下りなので奈良田ゲートまでマッハ555!     

帰りは林道をチャリでバビュ🚲っと1時間40分程度で帰還、チャーリー様様、恩恵は計り知れませんでした。

無事帰還にうぇーい👍

奈良田ゲートに戻ったのは22時30分頃、チャーリー🚲がなければ日付はまたいでいましたね。

当初、「早く帰ってこれたら温泉ですね!」なんて言っていましたが、そんなのは皆無。やはりビックルートは色々と想定通りにはいきませんね。しかし、達成感あり、充実感あり、学びも多し、色々と総じて楽しかったです。これにて、部活終了。長時間労働・深夜ヘッデン残業おつかれさまでした。

皆、下道&深夜高速をぶっ飛ばして帰りましたとさ!おしまい☆

冒険は続く…。